自然の光がたくさん入る明るい家のつくり方!知っておきたい「昼光利用」【冬暖かく、夏涼しい家づくり #3】
連載【冬暖かく、夏涼しい家づくり】では、パッシブデザインが目指す、自然の力を利用して快適に暮らす家づくり。その設計手法について、紐解いていきます。
「お客さまからの要望トップ3」に必ず入る"明るい家"。
パッシブデザインでいうところの"明るい家"とは、昼間に人口照明を点けなくても、十分に明るい空間であることが理想です。
さて、今回は「明るい家で暮らしたい!けど、具体的にどうすればいいの?」という人たちのために、自然光がたっぷりと入り、明るくて過ごしやすい。そんな家づくりのカギとなる "昼光利用" についてご紹介してきます。
1. パッシブデザイン "昼光利用"ってなに?
1. "昼光利用" とは
太陽の光をうまく利用して室内を明るくすることを、パッシブデザインの言葉で "昼光利用" といいます。この "昼光利用" がうまくできているかどうかで、室内の明るさ、そして住み心地が大きく変わってきます。
2. "昼光利用" うまく取入れると、どんな家になる?
"昼光利用" をうまく使うことができれば、昼間は人口照明を使わなくても、十分に明るい空間になります。
また、自然のエネルギ—を使うことで、電気代の削減と快適さの両方を得ることができるのも大きなメリットです。
2. "昼光利用" 基本のポイント3つ
"昼光利用" において、まずは押さえるべきポイントが3つあります。
① LDKは2面以上の窓で採光をとる
② その他の部屋は1面以上で採光をとる
③ 導光を取入れる
まず① LDKは過ごす時間が長いことや、家の中でも大きなスペースをとることから、最低でも2面以上の窓で採光をとるようにします。② その他の部屋は、お客さまの要望に合わせて、最低1面以上の窓で採光をとります。
③ 導光とは、窓から入ってきた光の通る道を建物内部でつくっておくことで、日射を得にくい部屋にも明かりを届ける方法です。よく使われる方法としては「吹抜け」「欄間(らんま)」などがあります。
ここまでが "昼光利用" で基本となる3つの考え方です。
3. "昼光利用" における「窓」のつくり方
さて、 "昼光利用" において重要なポイント。それは「窓の位置」です。これを間違えると、いくら先ほどの基本のポイントをおさえていても、明るい部屋にはなりません。「窓の位置」について、気をつけたいポイントを3つご紹介します。
1. 周辺建物との関係
前回の"「周辺環境」を読みとる"でもご紹介したとおり、敷地周辺の建物は採光に大きく影響するため、敷地や建物の情報を使って、日当りのシミュレーションを行います。
また、パッシブデザインの考え方として、夏場は強い日差しをカットし光を取り込みすぎないことが重要になるため、主に冬場を想定したシミュレーションとなります。
下図は、ある敷地の2時間ごとの日当りの様子を上から見たものです。(※画像右側に出てくる矢印をクリックして下さい)
▲ 西側には3階、北・東・南側には2階の建物が建っています
周辺の建物の影を重ね合わせていくと、1日を通して安定して明るい光を得ることができる場所が見えてきました。
これによって建物の位置、また最も明るくしたい部屋(LDKなど)の配置が決まり、さらに昼光利用に有効な開口の位置を決めることができます。
また、現在は空き地の場合でも、今後どうなるかはわかりません。もし建物が建った時どういった影響があるのか、シミュレーションを使ってある程度予測しておくことも必要です。
2. L字型の家の場合
最近、L字型のお家を希望される方も多いようですね。開口を大きくとることで一見すると採光がたっぷりとれる印象がありますが、実は窓の位置によっては自分の建物の影に入ってしまい、うまく日射を得られない「自己日影(じこにちえい)」という状態になってしまうため、注意が必要です。
窓に注目してみて下さい。図1では、南東に開いたL字の場合、窓は、お昼過ぎにはほぼ自分の建物の影にすっぽりと入ってしまいます。これでは十分な採光は望めません。
そんなときは、下図の方法を試してみましょう。
図1のように自己日影ができてしまう場合は、図2のようにすると長時間、日射を取り込むことができ、安定した明るさを得ることができます。
3. 軒を深くするときは要注意
軒は、夏の強い日差しをカットするのにとても有効な方法ですが、深ければ深いほど冬に日射を得る面積は狭くなってしまいます。昼光利用を行ううえでは、軒の出と窓の位置のバランスをとることが必要です。
まとめ
今回は "昼光利用" の基本から、具体的な注意点などをご紹介しました。パッシブデザインにおいて、このような建物の内部・外部での工夫は必要不可欠です。
今回ご紹介したようなシミュレーションを行うことで、その効果は何倍にもなり、結果的には理想のお家づくりへの近道につながります。ぜひ参考にしてみてくださいね。
次の記事はこちら
#4:住まいの「温度」も設計するパッシブデザイン
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