明るくて風通しの良い家をつくるには「周辺環境」が大きく影響していた!【冬暖かく、夏涼しい家づくり #2】
連載【冬暖かく、夏涼しい家づくり】では、パッシブデザインが目指す、自然の力を利用して快適に暮らす家づくり。その設計手法について、紐解いていきます。
前回の「小さなエネルギーで快適に暮らす、パッシブデザインとは?【冬暖かく、夏涼しい家づくり#1】」に引き続き、自然を取り込んだ家づくりを考え中の方のために、その基本となる「周辺環境」についてお話していきます。
さて、自分はどんな家に住みたいかなと思い浮かべたとき、自然の光や風、暖かさを目一杯に感じられる家ができればなあ、と思うことはありませんか?
では、今回のテーマ「周辺環境」はそこにどう関係してくるのでしょうか。
1. 周辺環境は「しっかり読みとること」が重要
「周辺環境」を重要視するなら、やっぱりそれなりの土地がいるのでは?と思われますよね。しかし、ここでお話するのはそういったことではありません。
ここでお伝えしたいのは、周辺環境を「しっかり読みとること」が重要なポイントになるということです。すこし個性のあるような土地でも、どういった環境にあるのか読みとり、プランに反映することができれば、理想の暮らしはできる!ということなのです。
これが、パッシブデザインは、自由度の高い注文住宅だからこそできる設計手法といわれる理由です。
逆をいえば、いくら環境の良い土地を用意できたとしても、この周辺環境の読みとりをいい加減にしてしまうと、「快適に暮らせる家」からはほど遠いものになってしまう可能性もあるというわけですね。
2. 周辺環境をみるときの、2つの視点
さて、そんな重要な役割をもつ「周辺環境の読みとり」ですが、実際にプランを作成する際には2つの視点から、その土地がどんな周辺環境にあるかを検討します。
1. マクロでみる周辺環境
マクロでみる周辺環境とは、「滋賀県大津市」という広い範囲でみられる環境のことです。
・どの方向に向かって風がよく吹く地域なのか
・どのくらいの陽の当たる地域なのか
2. ミクロでみる周辺環境
ミクロでみる周辺環境とは、建物を建てる敷地周辺という狭い範囲でみられる環境のことです。
・周りにはどんな建物が建っているか
・風向きにどう影響されるか
・敷地は南北に広いか
それぞれの視点から建物への影響を検討することで、効果的に自然のエネルギ—を室内に取り込むことができます。
3. 実際にやってみた
ここで、大輪建設では普段どのように周辺環境を読みとり、プランに活かしているのか、今回は「光の入り方(日当り)」と「風の通り方(風通し)」を例にご紹介していきます。
4. 「光の入り方」を読みとる
下の図は、敷地ごと作成しているシミュレーション画像です。
それぞれ午前10時に設定し、冬至(上)と夏至(下)で日の当たり方を比べています。冬至になると、南側は明るいままですが、北側はお隣の影に入ってしまいそうですね。こうみると、同じ時間でもまったく違う様子がわかります。
この敷地に建物を入れてみると・・・
敷地だけではなく、実際の建物や光を取り込みたい窓に、どれだけ影がかかるかが一目瞭然です。この敷地では、南側は明るい部屋になりそうですが、1階の南側以外は、暗くなってしまうことがわかります。
こうしたシミュレーションを重ね、プランに反映していくことで照明を使わなくてもこれだけ明るい空間をつくり出すことができるようになります。
5. 「風の通り方」を読みとる
上の図は、大津市の月ごとの風向きと強さを表したグラフです。1年を通して、南北によく風が吹いていることがわかります。
これだけでは地域が広すぎるので、実際の敷地の航空写真と合わせて、風がどう通るのかを予測していきます。大津市内にある大輪建設近辺の地図と照らし合わせると・・・
あくまで予測の範囲ですが、ここから実際に敷地へ行き、周辺の環境を確認しながら精度を上げ、その後プランへ反映していくという流れです。
まとめ
いかがでしたか?
「快適に暮らせる家」を考えると、つい性能などに頭がいきがちですが、基本の基本である、プランの段階からこのことを頭の隅に置いておくと、後々、後悔してしまうようなことにはならないはず!家づくりをお考えの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
次の記事はこちら
#3:自然の光を取りこむ、知っておきたい「昼光利用」
「パッシブデザイン」関連記事
#1:小さなエネルギーで快適に暮らす、パッシブデザインとは?
#4:住まいの「温度」も設計するパッシブデザイン
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