小さなエネルギーで快適に暮らす、パッシブデザインとは?【冬暖かく、夏涼しい家づくり #1】
連載【冬暖かく、夏涼しい家づくり】では、パッシブデザインが目指す、自然の力を利用して快適に暮らす家づくり。その設計手法について、紐解いていきたいと思います。
この回では、パッシブデザインって何だろうという人のために、基本の考え方からご紹介していきます。
1. パッシブデザインとは?
1. そもそも、なぜ注目されるようになったのか?
きっかけは東日本大震災。ガスや電気などへの依存が見直され「自然エネルギー」を上手く利用する、快適で健康的な住まいが注目されるようになっていきました。
最近では、計画段階からパッシブデザインを取入れた家づくりが、少しずつ浸透してきています。
2. 「パッシブ」ってどういう意味?
パッシブとは「= 受動的」の意味。つまり、私たちの周りにある太陽や風といった、自然エネルギ—を上手く取入れ利用することをいいます。
反対の意味で、アクティブ「= 能動的」という言葉もありますが、こちらはエアコンなどの機械設備をどんどん使って、暖めたり冷やしたりすることをいいます。
パッシブデザインでは、「パッシブ」と「アクティブ」のバランスがとても重要です。このバランスが崩れると、快適とはいえない環境になってしまったり、逆に機械設備に頼りすぎる家となってしまうのです。
3. つまりパッシブデザインとは?
自然にもともと存在する太陽の光や熱、風、地中の熱などの「自然エネルギー」。建物に工夫をすることでこれらを受動的(パッシブ)に利用し、快適な住まいづくりをしようという考え方です。
この設計思想や設計手法を『パッシブデザイン』といいます。
2. 快適は "機械的手法" ではなく "建築的手法" でつくる
日本におけるパッシブデザインの第一人者である、小玉祐一郎氏はこう述べています。
過酷な周辺の環境を緩和して快適な室内気候をつくろうとする際には、まず建築的手法を試み、不十分であれば、機械的な手法で補うのが原則であり、建築的手法は地域の気候特性に応じて多様にある。
では具体的に"建築的手法"とは、どんな方法なのでしょうか。次でみていきましょう。
3. パッシブデザインにおける、5つのデザイン
パッシブデザインは、なにも特別な設計技術ではありません。これからあげる5つのデザインを適切に建物へ反映することで、その効果は自然と現れます。
1. 断熱
断熱性能を高めることで、建物全体の保温性を高く保つことができます。せっかくつくりあげた快適な室内環境を持続するための、ベースとなる部分です。
2. 日射遮蔽
日射遮蔽により、夏の暑い日差しを室内に入れないようにすることで、室温が上がるのを防ぎます。昨今多くなっている「断熱性能を高めていくと、夏の室内が暑くなっていく」という問題も解消されます。
3. 自然風利用
通風には、家の中に風を通し室温を下げる効果があります。建物の中での風の流れを予想しながら、窓の大きさや配置をしっかりと考えデザインすることで、効果的に風を取り込むことができます。
4. 昼光利用
目指すのは、昼間に照明を点けなくても過ごせること。窓の役割や、特性などを考え配置することで、その効果は何倍にもなります。
5. 日射熱利用暖房
冬は日射熱を室内に取入れて暖房に使うことで、省エネでかつ、暖かく過ごせます。ポイントは3つ「集熱」「断熱」「蓄熱」これらをどれだけ、効果的に取入れることができるかが重要です。
ただし、これら5つのデザインはそれぞれが対立することがあるため、それらをいかにうまく解消するかが、パッシブデザインを取入れる上でのポイントとなります。
まとめ
いかがでしたか?快適な室内環境は設備に頼るのではなく、住まいを設計する段階で自然エネルギーを取り入れるなど、まずは建築的な工夫をもってプランすることが重要だということなのです。
また、その工夫は一軒一軒、その地域性を考慮して進めないといけないのですが、その方法についてはまた別の記事でご紹介することにします。
次の記事はこちら
#2:明るくて風通しの良い家をつくる「周辺環境」の読みとり方
「パッシブデザイン」関連記事
#3:自然の光を取りこむ、知っておきたい「昼光利用」
#4:住まいの「温度」も設計するパッシブデザイン
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